偽装停電と10万年後の安全

 偽装停電の文章は既に紹介したとおりである。私はこの文章を読んだ時に、原発再稼働に関する議論はこれで良いのだろうかと思った。別に田中さんの文章が間違っているわけではなく、田中さんを含めた最近の政府とマスコミの原発再稼働に対する基本的論点がずれているのではないかと思うからだ。それは最近の原発問題であまり議論になっていないが重要なことの一つに、原発再稼働によって放射性廃棄物が再び排出されることだ。放射性廃棄物について、まだ世界では最終的な処分方法が確立されていない。40年以上前から原発は「トイレのないアパート」と言われており、問題は先送りされているだけなのだ。

 このような問題を考えていた時に「10万年後の安全」いうDVDを発見して
見たところ大変なショックを受けた。You tube でも見れるので以下をクリックして欲しい。
http://www.youtube.com/watch?v=56JrtTWAyAY
内容はフィンランドのオルキルオント島にオンカロという使用済み核燃料の最終処分場が建設中で、そこでの問題点を指摘している。フィンランドにある4基の原子炉から出る放射性廃棄物を22世紀までオンカロに格納し、そこを封鎖する計画なのだ。放射性廃棄物は世界で25万tあると言われており、現在ではオンカロのように長期保管する方法が一番コストが安いと言われている。この施設は自己完結型で施設封鎖後10万年間放置できるように設計されている。ここで私が驚いたのは10万年という期間である。10万年後の世界は誰も分からないし、10万年後の人類が放射性廃棄物施設とは気が付かず封鎖を解いてしまったら、広範囲に放射能汚染が広がることは間違いない。

今から10万年前の人類はアフリカにおり、ヨーロッパにはネアンデルタール人がいた。10万年後の人類はどのような知識を持っているか誰も分からない。10万年後に地上がどのようになっているか誰も分からない。オンカロの地下は18億年前の岩盤で守られているので施設が崩壊することはないだろうが、一番の心配は10万年後の人間が使用済み核燃料がそこにあることを知らないで開けてしまうことだ。人間の行動は予測できない。このような問題を指摘しているDVDなのだ。

原発再稼働で電力料金が上がるとか、電力不足になると中小企業が倒産するとか、それは偽装停電であるとか、様々な意見がある。しかし原発を再稼働させるということは、10万年という先まで問題を先送りする放射性廃棄物を再び出すということを認識しなければならない。10万年後の人類に問題を先送りするのが原発稼働の問題なのだということを認識すれば偽装停電どころの話ではなくなる。3.11で科学的安全神話は自然という力の前では無力とかすことが分かったのであれば、それを繰り返さないのが人類の知恵ではないだろうか。今回の放射性廃棄物問題はその科学的安全神話そのものも確立されておらず、ただ将来の科学の発達に期待をかけ、問題を先送りしているだけなのだ。