練馬区農業体験農園15周年記念フォーラム参加報告

平成25年6月8日(土)に練馬区役所で体験農園のフォーラムが開催された。
主催は練馬区農業体験農園園主会であり、園主が15人、入園者が80人程度、後は行政を含め関係者であった。タイトルにあるとおり体験農園を始めて15年の経過と体験農園に対する様々な期待について活発な意見が交換された。当初の頃の資料を体験農園教会の加藤理事長が披露したが、そのなかで園主会の白石会長の父親が「こんなもんは農業ではない」と言って大反対していたエピソードが興味深かった。更に加藤氏が基調講演のなかで体験農園が持つ「防災機能」を強調していたのが印象的であった。農園の持つ空間スペースだけでなく、井戸水の問題や炊き出しの日常的訓練など、私が普段から感じていることを実態論として展開していた。
 会場全体から感じたことであるが、いわゆる生産者と消費者の交流集会とは全く異なる雰囲気であった。体験農園が単なる安全なものを食べたいという空間ではなく、地域コミュニティのなかでの一体感を創造した結果であろう。後もう一つ感じたのが園主の若さであった。私の見た感じでは園主の平均年令は50歳前後ではないかと思った。入園者の平均年令は間違いなく60歳以上であるが、皆さん元気であった。ここの入園者は農産物の消費者ではなく、園主の近所に住む人達であり、農園は地域のコミュニティセンターであり、園主との関係性は商品経済では説明できない。だから入園料が高いなどの話は全く出ないし、ある入園者は自分で作った農具を紹介するほどだった。
白石会長の父親は多分農業にこのようなパワーがあることを知らなかったし、良い農産物を作ることが農家の生き方であると頑なに思っていたのであろう。どの園主も最初は話すことに戸惑いを感じていたそうだが、入園者が作物の育つ様子と収穫物を食べることで園主の話を自然と理解してくれるので、そこに上手な喋り方はいらなかったのである。
最後に相続を含む農地問題も少し出たが、今回のフォーラムのテーマではないので深入りしなかった。しかし私の感じでは、もし園主がそのような事態になったら入園者が立ち上がることは間違いないと確信した。将に農園は地域の「入会地」であり、地域の暮らしに欠くことの出来ない位置を占めている。
生産緑地法の有効期限が9年後に迫り、都市計画法や都市農地の見直しがされているが、従来の縦割りの発想法ではなく、視点を地域に置いた体験農園の可能性について着目しなければならない。体験農園は市民農園の一つのパターンとして存在しているのではなく、21世紀における都市の入り会い地を実現していることに気がついてもらいたい。