都市農地減少の原因

都市農地を巡る情勢は大きく変化しようとしているが、私は根本的な原因にメスを入れないかぎり農地減少に歯止めはかからないと思う。根本的原因とは3つあり①都市農業経営の採算性の低さ②高額な都市農地の相続税私有財産の処分権限である。

都市農業経営の採算性
都市農業だけでなく現在の日本では農業経営だけではなかなか採算が取れない。その結果、全国では耕作放棄地が増加し、今や40万haを超えている。しかし日本国民の殆どはTPPによって海外から安くて安全な農産物が輸入されれば良いと考えている。日本の消費者は農産物の向こう側の農地に関しては殆ど関心が無い。その結果、日本の農業経営は採算が取れず、兼業農家になることによって糊口を凌いている。都市農地を生産基盤とする都市農業は消費地に近いという利点はあるものの固定資産税や都市計画税等の負担が重く、殆どの農家はアパート経営と兼業することにより農業を続けている。そこには都市農業の産業としての将来展望は描けず、家族農業としての担い手は存在しない。

高額な相続税
このような状況のなかで都市農業の経営者に相続が発生すると、農業経営の存続よりも先に相続税の支払いを優先して考える。もし農業経営の存続を考えた場合は相続税の納税猶予措置があるので現在の法体系の仕組みでも何とかなる。しかし農家の自宅敷地は農地ではないので高額な相続税の支払いは免れない。農業の作業場としての農家の敷地に対して、一般の宅地と同様の相続税や固定資産税を課すのが現在の法体系である。

私有財産の処分権限
農地の所有権は農家が持っている。国民の私的財産は憲法29条で保障されているが、公共の福祉に反しない限り処分は自由である。都市農地に関しても同様であり、農業委員会の許可を得れば農地としても宅地転用して宅地としても売却は可能となる。その結果、周辺住民の知らないところで区画整理事業が行われ農地は減少を続けるのである。区画整理事業は該当する区域の土地権利者の同意があれば認可され、周辺住民に多大な迷惑をかけないかぎり一方的に進められる。

根本的原因の概要はこの3つであり、農家は自分一人で悩んでも解決策は無く周辺住民との連携など考えもつかない。更に都市農地の存続を願う周辺住民はこの3つの要因の外側に置かれており、いくら開発反対運動をしても相手にされない。行政も地域住民の要望は聴くものの、法律の壁を盾に何もしない。昨年、都市農業振興基本法ができたが3つの根本的原因に対処する法体系の整備はできていない。特に③の私有財産の処分権限については全く触れられておらず、このままでは何も変わらない。