減反政策と生物多様性

米の生産調整の見直しを巡り様々な意見が出されている。しかし様々な意見の中で「米の生産調整=減反政策」という短絡的な構図から脱却できていないのが一番の気がかりである。減反政策は米の生産調整のために始めた政策であるが、40年前の社会環境と現在の社会環境は大きく異なることを認識しなければならない。減反政策によって影響を受けているのは稲作農家だけなのだろうか。減反政策によって帰る場所を失った生きものたちに思いをはせることはおかしなことなのだろうか。現在の議論は今年、名古屋で開催される生物多様性国際会議で議論されるレベルに耐えられる内容なのだろうか。昨年、韓国のラムサー条約締約国会議で水田決議がなされたことと整合性がとれるのだろうか。
今一度、議論の視点を変えてみてはどうだろうか。環境の視点から減反政策をとらえれば「様々な命を育む水田」に環境直接支払をしようという国民的議論が沸き起こることは必至である。そうすれば水田フル活用に対する国民の理解は得られるし所得補償としての直接支払に対しても国民は支持するものと思われる。減反政策に対する国民の視点も40年前とは異なっていることを認識しなければ新しい展望は切り開けない。