FTAと個別所得補償

民主党が選挙公約に日米FTA締結を盛り込んだことに対して自民党は一斉批判をしている。果たして、この批判は正しいのだろうか。世界の自由貿易問題と農業保護政策の問題は既にガットウルグァイラウンドで決着をしている問題であり、民主党が選挙公約にしている個別所得補償政策とは当時、世界が認めた農業保護政策の一つなのだ。つまり農業保護の必要性を認めながら自由貿易問題と軋轢を生じない方法として、価格政策から環境とリンクした直接支払政策への転換がラウンドの着地点だった。EUは将にその転換をCAP改革という形で劇的に行い、お隣の韓国でも親環境農業政策という形で転換している。EUは直接支払政策の中でも環境支払への転換の割合を年々高め、世界の環境政策をリードしている。日本では何度も構造改革を実施しようとしたが、農業政策の枠内で実施しようとしたため国民全体の理解が得られず本格的な改革には至っていない。これまでの失敗を踏まえ、民主党は農村票対策として所得補償政策を訴えるのではなく、農業環境政策としての所得補償政策を国民全体に訴えなければならない。自民党に批判されて「所得補償は自由化をするための政策ではない」などと言い訳をしているようでは、政権交代があっても日本農業の将来展望は切り開けない。(この文章は昨年の秋に作成したものです。今でも全く変わらない状況ですね)