改正農地法

改正農地法が成立した。これまでの農地を中間保有する必要がなくなった点と担い手に貸し出した場合に1万5千円を5年間交付して農地集積を促進する点が特徴である。更に一般企業には賃借しか認めない耕作者主義が貫かれ、業務執行役員の1人に農業への常時従事が課せられた。交付金の前提として仲介組織に貸出先を委任することが要件とされたので、円滑化団体の受け皿としてJAの役割が大きくなる。
内容的には以上であるが、今回の改正の中で大切なものが欠落していないだろうか。それは農村社会の将来像を大きく左右する地域環境問題である。農地集積を効率化の視点だけで進めた場合に起きる問題として生物多様性の問題がある。これまでも従来の圃場整備が生産性・効率性だけを追求した結果、地域の生物相が貧弱になった点が反省され、ここ数年、圃場整備の見直しがされつつある。選択減反の問題や水田のフル活用の問題も同様に地球環境問題の視点が欠落している。農業の多面性を一方では論じながら地球環境を意識しない政策は国民の支持を得られず、予算的にも持続しない可能性が高いことを認識しなければならない。環境直接支払の議論に耐えうるような中長期のビジョンを国民に提示し、地に足のついた議論と政策を展開しないと、この国のかたちは見えなくなるばかりである。
この文章は昨年書いたものである。先日、大阪府北部の天王寺地区で研修会を実施した。そこではオオサンショウウオを守ることを前提とした土地改良事業が実施されていた。事業の提案者は地元の生産者であり、事業を実施しなかったら廃棄物の投棄場所になっていた地域であった。事業の結果、稲作生産は継続され、オオサンショウウオの棲息場所も確保されていた。将に生物多様性を意識した圃場整備といえる。河川と圃場との間の魚道整備がされていないという問題はあるにしろ、非常に多くの生物相が見られた。研修会は府職員を対象に実施されたので地元の生産者との交流はなかったが、次回は是非、地元生産者や生活者が参加する生きもの調査を実施を約束して分かれた。若い職員からは経済効率性だけを追求しない圃場整備のあり方について今後とりくんでみたいという力強い言葉も聞かれた。