TPPと水田と票田

先日の新聞に自民党政調会長の石破氏の面白い発言が掲載されていた。TPP問題を巡る発言で、「TPPに反対している国会議員は日本の水田を守ろうとしているのか、自分の票田を守ろうとしているのか、どっちなんだ」と誠に明快である。
10日に日比谷公園で行われたTPP交渉に反対する緊急全国集会に約140人の国会議員が出席した。参加した国会議員は捻り鉢巻をして異口同音に「TPP交渉参加反対」を唱えている。集会に参加した3000人の農民はムシロ旗を立てて「TPP断固阻止」を訴えデモ行進をしている。
この構図は1993年のガットウルグァイラウンド交渉の時と全く同じである。当時も米を一粒たりとも入れないとして「ガット交渉反対」「米の輸入自由化断固阻止」を訴えていた。しかし、その後、日本の米価は低下の一途をたどり、耕作放棄地は増大し、農地の集約化と規模拡大は進まず、担い手は育たず、内容が変わっても減反政策は継続し、産地間競争は激化し、輸出に活路は見出せず、稲作農家経営の将来展望が描けないどころか、後数年のうちに米を作る農家がいなくなるとまで言われている。この17年を振り返ってみると、EUは没落のヨーロッパの時代から息を吹き返し、韓国はIMF基金による救済の時代から今や日本の企業を脅かす状況にまで発展している。それもこの17年間の間に農業の構造改革を実施した結果、経済発展してきた事実は間違いない。
TPP交渉推進派の経済界は、その結果だけを見て、TPP交渉に参加しないと日本は経済発展に取り残されるという議論展開をしている。これも17年前の構図と全く変わっていない。
日本人というのはこんなに頭の悪い国民なのだろうか。この17年間に議論が進歩していないのだ。世界から取り残されるのは仕方が無いのかもしれない。
今、一番大切なことは、この17年間の総括と今後の方向を国民全体で議論することではないのだろうか。それぞれが自分たちの立場を主張するのではなく、この17年間の歴史を振り返り、問題点の分析と今後の解決の方向性を国民全体で確認することである。その先頭に立つのが国会議員なのではないだろうか。今、農業問題だけが突出しているが、TPP問題は農業問題ではない。37万平方kmの国土と将来の日本国民の命がかかっている問題なのだ。