チェルノブイリ診療記

 今日のテレビ国会中継自民党の議員から「チェルノブイリ診療記」の話が出てきた。私もその本を丁度読み終わり、国の対応に憤りを感じていたので、興味深く政府答弁を聞いていた。質問は単純で、「ポーランドチェルノブイリ原発事故直後に国が子どもを中心に全国民に無機ヨードを服用させたが、我が国はどのように対応したのか」というものだった。理由は放射性ヨード131の半減期は8日なので、事故直後から充分な量の無機ヨードを汚染地域の子どもたちに投与し続けていれば小児甲状腺障害はかなり軽減されるからだ。実際に投与を実施したポーランドでは小児甲状腺ガンの増加は見られず、事故後数ヶ月を経過してから投与したベラルーシでは甲状腺障害の増加が見られる。それも被爆後、10年以上経過してから増加している。政府答弁は予想していた通りの曖昧なものであり、早急に事実関係を公表してもらわなければならないが、もはや「後の祭り」である。福島の子どもたちはベラルーシの子どもたちと同様に、これから10年後に甲状腺ガンを発病し苦しみ続ける可能性があるのかと思うとやりきれない気持ちになる。更に福島の子どもたちだけでなく、最近になってやっと判ってきた福島以外の放射能汚染地区の子どもたちに対し、政府は何の対策も講じていない。ちなみにポーランドチェルノブイリから600km離れている。
 私は1987年に当時の西ドイツに駐在員として赴任したが、将にチェルノブイリ事故の翌年であった。赴任直後にハンガリーチェコスロバキアに出張した。目的は日本向けの飼料用脱脂粉乳の集荷であった。両国はチェルノブイリからするとポーランドより更に遠くに位置しているが、やはり放射能汚染地域であり、牛乳も検査対象であった。日本向けに集荷した脱脂粉乳ガイガーカウンター放射能汚染をチェックしなければならなかった。まさか24年後に日本で同様の事態に遭遇するとは思ってもみなかった。当時の私には放射性ヨード131の知識はなく、食品による内部被爆の意識もなかった。私の子どもは当時8歳であり、東ヨーロッパにも旅行で連れて行ったりしたので、もし内部被爆による障害が現れたりしたら親の責任である。チェルノブイリ診療記を読み終わり、何の罪もない子どもたちが未だに障害と戦い続けており、その子の親は子どもに何もしてあげられない気持ちを何処にぶつけてよいのか。私も紙一重で同じような状況になったかもしれないと思うとぞっとする。
 国は国民の命と健康と財産を守ることが基本であるにもかかわらず、我が国は基本に忠実なのであろうか。福島原発直後に自国民を避難させた国に対して過剰反応ではないかと思っていたが、実はまともな危機対応だったのだ。最近の中国の新幹線事故対応を見て、国による情報統制のあり方について疑問を抱いた人も多かったと思うが、我が国も似たり寄ったりではないのか、北朝鮮のことも笑えないし、今回の東日本大震災対応を見た世界の国々は、日本国民を絶賛するが日本政府の危機対応は3流であると言っている。こんな政府を選んでいる我々日本国民は何流なのであろうか。