GIAHS in 佐渡

 12月9日10日と連続で佐渡のGIAHS関係の仕事をしてきた。3日間の共通メンバーは私と日本雁を保護する会の呉地氏、国連大学高等研究所のあん・まくどなるど氏の3人。初日の9日は佐渡生きもの語り研究所の主催のGIAHS勉強会であった。参集者は農家、観光関係者、一般市民で70人前後集まった。3人によるパネルディスカッション形式で行われた。あん氏からはGIAHSやFAOの概略の説明と今回、何故、佐渡が認定されたのかの説明があった。呉地氏からGIAHSとは結果認定ではなくシステム認定であり、認定が活動のスタートになるとの話。私は佐渡の人のこれからの暮らし方がGIAHS認定のポイントだという話をした。
 翌日の10日の午前中は佐渡テレビの取材があり、3人プラス市長と生産者の斉藤氏とコメンテイターの加藤氏が加わって座談会形式で行われた。市長からはGIAHS認定にいたる経過の説明があり、現在、佐渡の総ての集落で説明会が行われている話があった。GIAHSは観念的な部分が多いので、市役所としてGIAHS認定に伴う政策を明らかにすべきだという提案もあった。録画されたものは来年の2月に放映される予定。
 午後からは佐渡市、朱鷺と暮らす郷づくり推進協議会、佐渡低炭素島づくり協議会の主催によるGIAHS推進フォーラムであった。参加者は農家を中心として400人以上が集まった。国連大学副学長の武内氏とあんの基調講演の後に、パネルディスカッションが行われた。パネラーは基調講演者と呉地氏、市長に加えNPO法人佐渡芸能伝承機構の松田氏が加わり、私がコーディネーターを務めた。武内氏からは先進国として始めて日本がGIAHS登録された意味などの話があった。今回、松田氏が加わった理由は、GIAHSが農業だけでなく地域の伝統芸能も含めた取組みを評価されたことによる。松田氏からは佐渡では約150の集落で江戸時代から続いてきた祭が行われており、若い人たち佐渡定住の大きな要因ともなっているとの話があった。市長からは佐渡金山による急速な人口の拡大と米価格の高騰により、佐渡の新田開発が促進され、佐渡中に小さな自作農集落ができ、そこでの集落の結束を図るために祭等の取組みが行われたとの説明があった。更に、GIAHS認定は過去からの取組みが現在の取組みに連なり、現在の取組みが未来の取組みに反映されることだという説明もあった。
 今回の取組み以前は佐渡市民にとってGIAHSは唐突な取組みであり、認定によって農作業等に制約が出てくるのではないかという心配もあった。しかし今回のGIAHSフォーラム活動を通じて佐渡の人たちは、GIAHSに対する理解の入り口に立ったのではないだろうか。GIAHSは世界遺産登録と異なり、過去ではなく未来に向けての認定だということ。GIAHSはシステムという名前が示すように動的活動の認定だということ。農業だけでなく林業、漁業と佐渡の芸能等の文化活動や教育活動等が含まれること。
 私は今回の活動のなかで確信したことは、GIAHSは佐渡にとって江戸時代をモデルにしたルネッサンス運動ではないかと思う。将来の佐渡の人間に対して、現在の佐渡の人が何を残せるのか。それらを市役所がプランを策定するのではなく、集落ごとに皆が参加して議論をして地域のプランを作り上げて実行に移すことがGIAHS認定の狙いだと感じた。