絆とリンゴ狩り

 前回は盆踊りというイベントを紹介したが、自治会のレクリエーション活動について紹介したい。

 私の自治会の地域は日野市の浅川より南側の地区で、どちらかというと開発から取り残された地域である。そのために水田や梨やブドウの畑も多数残された緑豊かな地域である。自治会活動を始めて数年後、日野市の萬蔵院という地区で新たにリンゴの栽培を始めたが、なかなか売れなくて困っているという話が会員から入ってきた。農産物の販売は私の本来の仕事であり、ここで一肌脱がなくては男がすたると思い考えてみた。しかし今回は私がしている全国販売の仕事とはロッドが異なり、知恵を出さなければならなかった。地域の多摩川梨と異なり、ブランドとしても確立されておらず、そのために特定の顧客もいるわけではなかった。

 私の自治会の人たちは、農家ではないので自分たちの住んでいる地域の直ぐ近くにリンゴ園があるという情報を知らない。殆どの人はリンゴは店で買うものだと思い込んでおり、自分の住んでいる近くにリンゴ園があれば必ず買うはずだと考えた。それならば自治会の会員を潜在顧客として位置づけ、リンゴという商品を売るのではなく、リンゴ園がある近くの地域というものを意識させることにした。

 そこで私は自治会の秋のレクリエーション活動を企画し、リンゴ園に自治会の親子を連れて行くことにした。毎年実施している地域の美化運動と一体の企画をした。朝は地域のゴミ拾いをし、10時30分くらいから歩き始め、お昼前に現地に到着をしてリンゴ狩りをして、現地の人と一緒にお弁当を食べるという企画であった。私の地域から現地までは急な坂道で途中に百草園という梅で有名なところがある。乳母車を押して歩くと約30分以上かかるところである。企画書を作って回覧板を回したら150人の応募があった。参加費は500円でお弁当、飲み物、リンゴ1kg、さつまいも2株という企画だった。もちろん自治会として赤字であるが、自治会の交流経費なので何も問題はない。

 リンゴ園に到着した会員は異口同音に、こんな近くに畑が広がっていることに感激し、自分たちの住んでいる地域に誇りを感じていた。子供たちは木になっているリンゴに感激し、その美味しさに一層喜んだ。さつまいも掘りにも子供たちは感激し、顔を真っ黒にしていた。親たちは昼食後に農家の庭先で販売している野菜や玉子を買っていた。地域の生産者は悩んでいたリンゴが飛ぶように売れて感激し、私達に感謝の気持ちを表していた。参加者は沢山のリンゴや野菜を買ったので荷物がいっぱいになったが、そこは近くの自治会の便利なところで用意した軽トラックに積み込み、自治会の公園まで運ぶ段取りにした。帰りは手ぶらで散策しながら帰れる。

 この企画に参加した会員は私が住んでいるブロックの新しい住民の親子連れが多く、旧住民との交流が図られ新たな絆が作られた。最初に実施したのが11月3日であったので、その後、この日がリンゴ狩りの定例となった。更に同様の企画が隣の自治会でも企画され、一定の量が地域で販売される典型的な地産地消となった。私達の自治会は会員から月額100円の自治会費をもらっているので、このような自治会のイベントが可能であり、会費を集めて会員に還元しない自治会活動は活性化しない。