絆と選挙

 これまで絆と自治会活動について書いてきたが、活動を始めて数年後に地域から市議会議員を選出しようという話が来た。自治会活動は選挙とは全く関係の無いものであるが、自治会で培ってしまった義理と人情という絆は、無関係でいることを許さなかった。

 選挙というものは地元で働いている人間の関心事であり、私のように都心に出て働くサラリーマンは無関心であるのが普通である。しかし自治会活動をしていると地域の会員から様々な苦情が出され、それをいちいち市役所まで連絡して解決を図るということがいかに大変かということが分かった。地元に議員がいないということが、自治会活動にとってハンディキャップであることは明らかであった。もしかしたら自治会が民主主義の原点であるということを具現化するのが選挙であるのかもしれない。しかし自治会活動では選挙活動は禁止されている。

 私の自治会活動を見ていた地域周辺の人たちによって、知らないうちに選挙参謀になってしまい、隣の自治会で私と連携をとっている仲間と3人で選挙プランを練り始めた。当初は誰を立候補させるのかも決まっていなかった。その後、候補者が決まり、選挙の戦い方が議論された。以前書いたように私達の地域は日野市南部に位置し、開発から取り残された地域だったので「南北格差の解消」というスローガンを立てることにした。更に、多様な人達を惹きつけるために、当時話題になっていたダイオキシンの問題や、その後の私の活動と大きく関係してくる千代田区林間学校跡地の利用問題等、今日的な言葉でいうと様々なマニフェストを掲げた。どこかの党と違い私達の掲げたマニフェストは殆ど実現している。

 選挙で一番大事なことは後援会づくりである。これまでの選挙結果を分析し、後援会の歩留まりを計算すると、どうしても3000人の後援会名簿が必要であった。選挙事務所に集まった人たちに後援会への入会勧誘を依頼した。このような時に有効に作用するのが地縁血縁である。更に自治会活動に参加してくれた地域住民との絆も有効に作用した。

 選挙結果は計算どおり当選したが、選挙活動を通じて分かったことがある。選挙とは地域のお祭りであり、都市部から離れれば離れるほど浮動票は少なくなるので票読みが可能となり、実現可能なマニフェストを掲げる候補者が当選をする。地方選挙ではそこに政策論争がないので、寝に帰るだけのサラリーマンは1票を投じようにも、地域社会の利害関係社会の中にいないので有効な浮動票にもなれない。地方公共団体の公共サービスも、そのような地域には優先的に実施されない。自分が生活をしている地域に地方税が有効に使われていないことも知らない。普段から住んでいる地域の自治会活動に参加していれば、地方選挙といえども候補者が見えてくるし、地方自治のあり方も見えてくる。

 私達の地域選出の議員はその後連続して当選し、マニフェストで掲げた千代田区林間学校跡地の利用も実現し、私の自治会活動はそこを拠点として広域に展開するようになった。