農協改革と国民

最近の新聞には、農協をめぐっては先月、政府の規制改革会議がJA全中の廃止や全農の株式会社化など抜本的な改革案を提言したことを受けて、自民党はJA全中を5年程度の猶予期間を設けて廃止するという案を軸に調整を進め、今週中にも改革の方針をまとめることにしているという記事が掲載されている。一般紙に掲載されているこの記事を読んで国民はどのように感じているのだろうか。まず殆どの国民は全中とか全農とか書かれても、その違いが分からない。農協という組織も大きな組織であることは分かるが、どのような組織であるかも分からないし、最近ではTPPによる農産物関税撤廃阻止という反対運動を繰り広げている圧力団体だという認識程度ではないだろうか。農協という組織は農家の利益代表であることは何となく分かるが、国民にとってはどのような利害関係を持つのか分からないのが実態ではないだろうか。そのためか新聞記事の中にも、この問題に対する国民の反応は殆ど掲載されていない。更に、全中も全農も改革案に反対するだけで、国民に対してこの改革案が何を意味するのかを説明する行動をとっていない。果たして、この国はこれで良いのだろうか。

私は35年間、全農という組織にいて、組織圧力に抵抗しながら自分の考え方に忠実に仕事をしてきたので、農協という組織の良いところと悪いところを知っている。そこで今起きている問題が国民にとってどのような利害関係を持ち、無関係でいられる国民は存在しないことに早く気がついて欲しいと思い、ブログに書くことにした。

私は全農に入る前は全く農業の門外漢であり、東京の下町の商家の生まれであり、大学でも農学部ではなく法学部であり、協同組合論などは全く知らない人間であった。そういう意味でその当時の私は、この問題との利害関係性を意識しない現在の殆どの国民と同じ意識であったと言える。このように先入観を持たずに白紙の状態で農協を論ずることができる。更に全農の時代は、海外事務所も含め様々な異なる職場を経験したので、体験を通じて農協という広範な機能を論ずることができる。また全農在職中から住んでいる地域の自治会活動を20年以上経験しており、現在もNPO活動を含め市民活動を実施しているので、農協を論ずる際に一番重要な地域の協同活動という視点からも論ずることができる。

このように私の人生で経験した様々な視点から、今日の農協問題をこれから国民に解説し、ともに考えてみたいと思っている。