准組合員の制限

今回の農協改革で准組合員の制限という項目がある。これは国民生活とどのような関係があるのかを説明したい。

最近の数字では農協の正組合員は472万人、准組合員は497万人という数字が発表されており、准組合員数が正組合員数を上回っている。本来、農協は農家正組合員のための組織であるのに非農家の准組合員のほうが多いというのは農協本来のあり方からするとおかしい。これは地域における公正な競争を阻害しているのではないかという論点で改革案が出されている。それでは何故、准組合員数が増加しているかというと、それは農協の銀行業務と保険業務が他社と比較すると有利な場合があるからだ。

農協の銀行業務とはテレビでも宣伝しているJAバンクという融資や貯金であり、保険業務とは共済と呼ばれ、生命保険、火災保険,自動車保険等である。これらの商品は組合員の利用を前提として設計されており、営利を目的としていないので他社に比べると有利な場合がある。有利になる原因としては、貯金や保険の勧誘業務は殆ど農協職員で行われており、地縁血縁を利用し、更に通常業務を終えた後の夜間推進という形で営業が展開されているからではないかと思われる。更に職員には実績に応じて手当が支給されるが微々たるものであり、現在では渉外業務を分けて夜間推進をしていない農協もある。

本来的に農協は協同組合の組織なので組合員以外の利用は2割までと制限されており(員外利用制限)、誰でも農協を利用できるわけではない。しかし員外利用制限に抵触しない准組合員制度を利用すれば農協を利用することができる。この制度を利用して農協の銀行や保険を利用する人が准組合員である。准組合員は農協の総会の議決権はないが、一定の金額を農協に出資すれば誰でもなれるので、正組合員数を上回る結果となっている。

今回、提案されている准組合員の制限を実施した場合には、現在、農協の銀行や保険を利用している国民にも何らかの不利益が生ずる可能性がある。更に地方には生活店舗購買事業としてのAコープというスーパーがあり、厳密にいえばそこの店舗利用も員外利用の制限を受ける可能性がある。農協のAコープ店舗は中山間地域にも展開しており、このような改革を薦めた場合に生活困難者の増大を招く可能性もあるのだ。